だいこん

通い大工の安治と、石工職人の長女みのぶとの間に生まれた娘、つばき。「だいこん」という一膳飯屋に賭けた彼女の半生と想いを綴った物語。
ストーリーは、良い意味での寂寥感にあふれている。
読み進めていくにつれて、ひたむきに努力するつばきに親しみを覚え、彼女の人生における転機に自分自身の思い出がひとつひとつ重なっていく。
結婚や出産、親類の葬式などで、誰しも人生の節目を感じることがあると思う。つばきが過去を回想していくにつれて、これまでの生きてきた道程が自然と想起され、懐かしさや後悔、寂しさ、そして今ここにある自分自身に対しての肯定的に自信が湧き上がってくる。
味の染みただいこんのように、「だいこん」にはつばきの想いがぎゅっと凝縮されている。特に私のような独り者にとっては、とても共感を覚える物語だと思った。